『愛国者の死』(あるSNSに関するたわごと)

ただの日記です。

2024年9月8日だったか、一人のSNSユーザーが「息絶え」た。以下はそのユーザーの日記である。

本当に死んだわけではないので安心してほしい。他のSNSでピンピンしている。

この方とは特段仲が良かったわけではない(多分認知はもらっている)ので呼称を考えるのに苦労したが、ひとまず「にゃご氏」で行こうと思う。


にゃご氏は、とあるMisskeyサーバー内で極めて異彩を放つ唯一無二のヘビーユーザーだった。このMisskeyサーバー(Misskey.systems、通称みすてむず)は私が参加した2月当初から「身内ノリ」があった。にゃご氏は、その投稿速度から「身内ノリ」の中核にいることは明らかであった。

来たる9月7日、みすてむずのSNSにこのような通知が舞い込んだ。内容は誰でもわかりやすいように、若干表現を変更している。

LTL(ローカルタイムライン)において、濃い身内ノリの投稿を原則禁止し、別チャットルーム1に隔離するものとする。罰則は設けない。

ローカルタイムライン(LTL)は、みすてむずに参加している人全員が見るタイムラインであり、そしてみすてむずではLTLが中心であった。

この通知を送信したみすてむず管理者の意図は、概ね以下のようなものであった。

  • みすてむずは同接人数が少なく、このまま行けば過疎が待っている
  • そのため、メンバーを増やそうと考えている
  • ところが、LTLにおいて身内ノリが濃すぎて、新参者が居着きにくいと考えている
  • こういった濃い身内ノリは新規参入を遠ざけるものであるから、隔離したほうがよいものである

なるほど、理屈としては納得できる。そのほうがいいかもしれない。

ところが、この「濃い身内ノリ」とは一体何であろうか。「罰則なし」との明記はあるが、これはお知らせ本体に書いてあるものではない(管理人による「後付け」である)。それではさて、管理者が「(曖昧なもの)は隔離」と宣言してしまえば、どうなるか。想像に難くない。(これが後知恵バイアスであるという指摘は甘んじて受け入れる。)

結果として、ほとんどの「濃い身内ノリ」を自覚したユーザーが「別チャットルーム1」に移動する事態となり、LTLは突如閑散とした。LTLは身内ノリで成り立っていたものであるから、当然である。

とはいえ、この状態は決して悪いものではなかった。身内ノリが出ている自覚のあるものはチャットルーム1に自主隔離し、そうではない一般的な話はLTLで行う。そういった新たな習慣が育っていった。

結局、戻った

この変更は、おおよそ3日後に突如取り消しとなった。

理由は不明であるが、管理者がルールの「曖昧さ」に気づいたことが主たる原因だろう。皆が考える自主隔離の基準は事前の誰の想像よりも低く、ほとんどの人がチャットルーム1に自主避難をしていた。最大の理由としては、「雑談をしていたら身内ノリになるから」ということがあるだろう。

チャットルーム1は実はこの事件の前から存在していたが、これまでにない盛況ぶりを見せた。そのチャットルーム1から出ていかない人が多くなったため、こちらは強制閉鎖となった。

その後は、心なしか、今日に至るまでLTLは9月7日以前より少しだけ静かになった。

この記事は何?

なんだか気づいていない人が多い気もするが、私はみすてむずの常連(チョットデキル)の中で、おそらく最参である(2024年2月に参加)。前置きが長くなったが、この記事の主眼は

  • 新参者だったとき、どうやってみすてむずに馴染んだか
  • みすてむずは、新参者に対してどう映ったか

を説明することにある。まだまだ中間地点だ。コーヒーでも振り回しながら読んでほしい。

2月、私にとっての「みすてむず」

すべての既存ユーザーは、遠い存在だった。「みすてむ新卒」「みすてむ先輩」といったバッジはあまりにか弱で、「お前は新参者である」というレッテルを貼られているようだった(実際にそうなのだが)。よく観察しなくても他の人は全員「チョットデキル」バッジをぶら下げていて、自分だけ新参であることを常に意識しながら、若干緊張して、でも言いたいことは言って過ごしていた。最初の方は、ずっと敬語で喋っていたのを今でも覚えている(どこでもそうだが)。

このシステムは悪いことばかりではない。新参だから、身内ノリに配慮してもらえるし、Misskeyそのものについてわからないことがあれば誰かが教えてくれる。それでも、なんだか「壁」はあるように感じた。

話題が身内ノリでなくても、参加しているメンバーが「チョットデキル」ばかりでは、とても入りにくい。私はそのあたりが鈍いのもあり若干参加することもできたが、他のメンバーは新参者の私にちょっと配慮しているようにも見えた。

新参の頃の身内ノリ

新参の頃(2~3月頃)、身内ノリは気にならなかった。というより、気にする意味がなかった。気にしても参加できないからである。

身内ノリが日本人にとって特有であるのかどうかについてはわからないが、少なくともLTLという閉鎖空間・知り合いがいつもいることを主体とするサーバーにおいて、そういった身内感・身内ノリが醸成されるのは少し考えればわかることである。私個人も、過去に幾度となく似た事例を目にしてきた。

「デンシニャシニャシニャ」を初めて投稿したときの「集団に参加することができた」という感覚は、人間の根源的な快楽であるように感じた。人間はそのようにできていて、面倒なので名前も出さないが、昔の人も幾度となく口にしている。そう考えると、この「身内ノリ」が集団で起こるということはやっぱり普遍的かもしれない。

知らなかったこと

ところで、私はみすてむずに来てから知ったことがいくつもある。

まず、管理者がわからない。みすてむずは誰かが管理していて、利用規約の投稿主が「nekokan」であることから、おそらくこれが管理者なのだろうという類推はできた。しかし、ロールを押してもメンバー一覧が見れない。つまり、管理者を一望できない。これは、とても不安なことであった。

その後、「このサーバーは一人体制の管理である」ということを後から知り、愕然(というほどでもないが)とした。 このサーバーは、管理者を誰でも確認できる形で公開する姿勢がない。 私の目には、そういうふうに映った。

そうすると、次はみすてむずの成り立ちに考えが巡る。おそらく、このサーバーは管理者のカリスマ性または知名度のもとにある程度の人が集まっていて、「管理者はこの人です」ということを、みんなが常識として知っている、またはそういう時期が少なくとも昔にあったのであろう、という推測はできる。

しかし、「特定の人の名のもとに集まるサーバー」が、「身内ノリ」「偶像化」の起きないサーバーでなくて何であろうか、という疑問は拭えなかった。それでも、サーバーの管理者を著しく崇拝したり、LTLがその話で埋まったりすることはなかったので、当面この問題は考えないことにした。

私の方針

私は、みすてむずに参加した、あるいは参加する前から一貫した方針を持っている。「そのコミュニティに合わせる」である。

そのコミュニティが身内ノリを受け入れるなら、自分もノる。受け入れないなら、なにもしない。それだけである。管理者以外が「コミュニティ(メンバー)が俺に合わせろ」をしていいのは、幼稚園児までである。誰のことを指しているのかは察してほしい。

そして、みすてむずは「身内ノリ」が分かる人が入ることのできる、公開の閉鎖空間と化した。

妄想

以下は、私が管理者だったらこの状況を打破するためにこうするな~、という無責任極まりない妄想である。アドバイスですらない。真に受けないようにしてほしい。

私が以下を実行しない(サーバーを作らない)理由はいくつかあるが、そもそもFediverse上に知り合いが少なく人が集まる見込みがないのと、私はコミュニティを過疎らせる天才だからである。

身内ノリの即時禁止または隔離

サーバー参加者が最初に目にするものがLTLである以上、身内ノリは即刻全てLTLから排除し、隔離する。

改悪されていくXに対してエンジニアのためのALT Twitterににゃりたかった

のであれば、避けて通ることができないものである。少なくとも「LTLを常識的で、誰でも入ることのできる社交場として保つ」という方針は固持する。

なお、これは身内ノリの全面禁止を意味するものではない。HTL(ホームタイムライン・フォローしている人の投稿が流れてくるタイムライン)では、好きなだけ身内ノリを爆発させるがよろしい。

民主化

Misskeyサーバーは、原理的に独裁主義国家になりがちである。しかし、今回の件は独断で多大な影響をサーバーに及ぼしてしまった。今回の件に関しては、私は事前にユーザーの意見をしっかりと聞くことで回避できたものと考える。

ユーザーを増やして持続可能なサーバーにしたいのであれば、なおのこと民主化すべき方向で推進する。管理メンバーを増やさなくても、公開で意見を募集するなど、民主主義ごっこに近づける方法は無限に存在するから、可能な範囲で試行錯誤する。

管理者の設置

私は、自分の判断能力や勘を信用していない。かつて200人規模のグループを運営していたときは、管理者として常連から6人程度を引き抜いていた。今考えると200人(アクティブメンバーではなく、単なる参加メンバー)に対して6人は多すぎるが、「若干サーバーの方針転換が遅いかも?」ぐらいで特段支障はなかった。このことから、同接80人、全体1718人のサーバーに対しては5人程度の管理者が適当ではないだろうか。

しかし、まだ人数が十分集まっていないサーバーにおいて「選挙」を行うとコミュニティ全体が薄ら寒くなる。それをやってしまえば派閥が生まれてしまうからだ。とはいえ、みすてむずのメンバーから管理者を手動で選定して推薦する、というのも現実的ではあるが手間である。実際のところは、フォームに回答を記入してもらうことを持って選考を行うのがよいのではないだろうか。

これは妄想だから問題ないが、この案を現実に持っていくことにはリスクがある。管理者を複数置いた状態でコミュニティが増長すれば、結局派閥が分かれる可能性があるからだ。Fediverseにおいて分裂は決して悪いことではないが、これは利害関係者全員の精神衛生に悪影響を及ぼす。他のサーバーを注意深く観察し、どのように管理権限を運用しているか研究してみる価値は大いにある。


この投稿を以ってみすてむずを非難したり去ることはないが、改めて今のみすてむずは、

  • 新参にとって管理者が誰であるかすらわからない状態であること(すなわち、運営実態、ルールの判断などを行う主体が不透明であること)
  • 開けた社交場として運用するのであれば、いつかは身内ノリを排斥・隔離しなければならない日が来ること

を知っておくといいことがあるかもしれない。

そしてこれは妄想の続きだが、本当に

改悪されていくXに対してエンジニアのためのALT Twitterににゃりたかった

のであれば、私ならみすてむずは現状のまま残し、新規サーバーを新しい方針で立ち上げることにするだろう。身内ノリは昔からずっと存在し、もはやサーバー文化の一部(一部、という表現が不適切に思えるほど大きいもの)と化している。これを「うまく動かす」のは困難を極めるだろう。

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